食味

静かで暗い宇宙の中でエアコンが一定の温度を保つ。温かくもなく冷たくもない。

周囲と隔離されたかの様な孤独の中で、私は自身が宇宙人だと確信した。私は世間に何ら影響を与えないし、世間も私に影響を与えない。

誰とも繋がらないのは良い事では無いが、誰かと繋がるよりも良い事に思える。不安から逃げ回る為だろうか、心が赴く侭に動き回り其れでも振り払えないヌルい空気の重さに次第に疲れて眠る。

此処には何も無い。故に私が考え得る総てが存在した。私は其れ等が存在する事を証明したかったが、私が知る限り其れ等は確実に存在しなかった。

地平線へと向かう舗装された真っ直ぐで平坦な道が見える。
歩いて行くのに対して苦労しないだろう。

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