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 近所を散歩していると、目の前の坂道から桃が転がってきた。 

「その桃つかまえてー!」

 桃の持ち主らしい人の声にボクは桃目掛けて走り込む。足でいくつか掴む

と、今度は口でも捕まえる。だから歯形がついているのは仕方ない。

「ありがとう、助かったよ!」

 息も絶え絶えの主から聞けば、主に代わって桃たちが日本中の鬼を退治に行

くと言って転がっていったそうだ。

「あの、よかったら、これ。お礼と言ってはなんだけど」

 差し出されたのはそれは美味しいと評判の団子。もしやこの流れ……。不吉

な予感があり、ボクは叫んだ。

「わん!わわわわんっ!わおーん!(ボクは忠義深い柴犬様だぞ!ご主人様の

頼み事ならいざ知らず、誰が他人からの貰い物で鬼退治など行くものか!)」
 
公開:25/11/04 17:13

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