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 斉藤くんは、いつも親指に絆創膏を貼っていた。 

「汚れてるじゃん、そろそろ貼り替えなよ」

 不潔なのはよくないと忠告するも、聞き入れてもらえない。

 そんな斉藤くんが、絆創膏を貼り替えた。前のが普通の、茶色というか肌色

というか、地味な絆創膏だったのに対して、今度はキャラクターものの可愛ら
 
しい絆創膏だった。彼女に貼ってもらったのか?とからかうと、ひと睨みさ

れた。 

「これは化粧まわし。知らないのか?」

 そう言って去ろうとする斉藤くんがちょっと立ち止まり、肩越しに言う。 

「今日は千秋楽なんだ。角番か否か、きわどくてね。だから集中したい、邪魔

しないでくれ」
 
 教室のすみではいつのまにか、指相撲大会が行われていた。
公開:25/10/31 21:46

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