ボトルの船長

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 父さんの手伝いで棚の中を片付けていたら、奥にビール瓶があった。
「空じゃん。捨てるよ?」
 父さんに言うと、青ざめた顔で瓶をひったくられる。
「だめだよ!よく見てごらん」
 そう言われて瓶の中を覗くと、琥珀色の波に揺られる船があった。
「これはボトルシップといってね、父さんの宝物なんだよ」
「父さんが作ったの?」
「作る?まさか!作ったのは別のチームの人たち、父さんは乗って操縦する係」
「乗ってたの⁉︎これに?」
 どれくらいの船?父さんの階級は?
 いろいろ聞いたけど、父さんは教えてくれなかった。ただ、なぜか「何もわかってない」という顔でぼくを見ていただけだった。
 後日、ボトルシップは夕日のあたる机に置かれていた。
「なにしてるの?」
 たずねると、父さんが言った。
「今日は船が陸に上がる日でね、今みんなで祝杯をあげているところだ」
 ボトルから、喉を鳴らすみたいな音が聞こえた。
公開:25/10/13 11:38

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