夜に咲く花

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「谷中さん、この人は採らないほうがいいですよ。なんせ、詐欺師なんですから」
人事部と仲が良かった私はそう提言した。

私が入社したての新人だった頃に彼女と出会った。
それから程なくして、彼女は私の部屋に転がり込んだ。
幸せな日々だった。でも、それは長くは続かなかった。

彼女、美咲は私の衣服と一枚の紙切れ「だけ」を残していなくなった。

リストに載っていた名前を見て、私はなんとなく美咲に連絡してみる。
驚いたことにすぐ電話が繋がった。
「お前、うちの会社を受けようなんて何を考えているんだ?」
「もう足は洗ったの。地に足をつけて生活したかったから」
「近いうちに会えるか?」
「もちろん。でも本当にいいのね?」

その日にあったことを友人の牧田に話した。
「前に一度騙されたんだろ? 確かにお前は一流企業に務めていて成績も優秀、顔だっていい。なのになんで女を見る目だけは無いのかね?」
「えっ?」
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公開:25/10/13 01:43

久我由宇

くがゆうと読みます。

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