心の声が聞けるビール

　サークルのメンバー全員が集まってするバーベキューは、序盤からかなり盛り上がっていた。飲まされ過ぎないよう上手くかわしつつ、想いを寄せているカオリに近づいた。
「カオリちゃん。これ僕のお気に入りのクラフトビールなんだけど、飲んでみる？」
「ありがとう。へえ、初めて見た」
　カオリは物珍しそうにラベルを眺める。
　これは「乾杯した相手のことをどう思っているかがわかるビール」だという。
「乾杯」
　しかし彼女は小さな口でちびちび飲むばかり。あれ、おかしいな。
「カオリ～、俺とも乾杯しようぜ」
　乱入してきたリョウタがカオリの缶に自分の缶を押し当てる。カオリは微笑みながら缶に口をつけた。すると、彼女は「イケメンイケメン」と飲むではないか。
　その流れで他の同期も次々にカオリと乾杯していく。
「色白色白」
「優しい優しい」
「面白い面白い」
　じゃあ僕と乾杯したとき、ちびちび飲んでいたのは……。