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 昆虫学者のS博士が育てているのは、数年経つと花になるという蝶だった。
「どんな花になるんだ〜?」
 ワクワクしながら毎日大事に育てていると、やがて翅の先端からなにかが生えてきた。次の日にはもうひとつ、またもう一つと、それは日に日に形を変えていき、ついに蝶は花になった。それはまるで蝶が髪飾りをつけているようで博士はこの蝶がメスだったことを思い出した。
 花は長く咲き続けた。が、それも枯れて実になるかという時、驚くべきことが起こった。花はなんとまた蝶になったのだ。やがてその蝶は博士の制止むなしく飛び去ってしまった。
「これが大事な娘を嫁に出す父親の気分か」
 博士はまた、蝶がメスだったことを思い出すのだった。
公開:25/09/22 17:39

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