推し寿司

1
2

寿司を握る職人が、アイドルになった。

ファンはネットで入場券を買い、店に行って職人の握る様子を見る。
人気のチケットは一瞬で売り切れてしまう。

ファンにはそれぞれ推し職人がいた。
推しの握る「推し寿司」は、ファンの憧れだ。

ナマモノだけに、人気の移り変わりはとても早かった。
ランキングは日々入れ替わり、握りパフォーマンスは変化していった。
ライブ、ダンス、握手会。
そして──飽きられてしまったのだ。

けれど、職人は生き残った。

一時の流行で職人を目指したものは消えたが、 
流れに乗らなかった、昔ながらの寿司屋が残っていたのだ。

フナ寿司のように、少々くせはあるけれど、滋養に満ちた寿司を出す店。
こだわった食材に、丁寧な仕事で美味しい寿司を出す店。
静かに、推しとの時間を過ごせる店たちだ。

そんな燻し銀の魅力に改めて気づいたのは、推し活に熱狂したファンたちだった。
ファンタジー
公開:25/09/11 11:18

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容