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 この住宅街もおれが出ていけばもう無人だ。ふと目を瞑れば脳に、耳に、懐かしい時間の記憶が流れる。
「そろそろ行くか」
 名残惜しさを振り払って道の向こうに目を向けた、その時だった。数匹の猫が民家に入っていった。五匹くらい?いちばん前の猫はしきりに後ろの猫たちを振り返っていた。おもしろそうだと思いあとをつけると、なんと猫たち、家の中まで入っていったではないか。よく見ると玄関の脇に小さなねこドアが設置されていた。
「此木(このき)さん、猫飼ってたのか」
 首を巡らして窓から室内を見ればやはり先ほどと同じ順に猫が並び、先ほどと同じように先頭の猫が後ろを振り返っている。
「お部屋見学」
 ふとそんな言葉が浮かび、おれは来た道を振り返る。離れ難いおれの家。あの家にもいつか、猫の買い手がつくのだろうか。そう思うと、不思議に前を向いて進む勇気が出てきた。
公開:26/01/15 10:56

さがやま なつき( 鹿児島 )

2021年7月初投稿。お話の主人公は男性(もしくは少年)が多め。女性はキャラ作りが苦手です。(口調が書けない)

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