和尚の門松

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 地面から、指が生えていた。巨大だが、たしかに指。3本。おそらくは、人差し指、中指、薬指。
 指からは、声が聞こえていた。「まだじゃ、まだやりたいことがあるのじゃ。やらねばならぬことが」
 指の声が薄れてきたのは、すぐのことだった。苔なのか、腐ったのか、緑色になってきたのである。
 薄れてきた声は、だがそれだけに重たい響きを帯びてきた。そして人々は気づいた。これはお経だ、と。寺の和尚、頑固で粘り強い和尚が、死にきれずに指と化身してここに留まっているのだ。
 門松に仕立てよう、そう言い出したのは和尚の家族か、友人か。
「なぜ門松?たしかに形状は似ているが」
 問う者もいたが、提案者にはある読みがあった。そしてそれは当たった。門松に仕立てたとたん、読経の声が止んだのである。
 以来、和尚の門松の周りには人が集まるようになった。
 門松が建つ敷地、そこは和尚の妻が眠った病院だった。
公開:26/01/06 07:21
お正月 門松の絵文字が出てきて 指に見えちゃって… とんだホラーになりました めでたい時期にすみません…

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