おちょこ地蔵

10
6

 とある夜、寝室で寝る準備をしていると、奇妙な音が聞こえた。こんな音だ。
 ずず、ずず、ずずずず。
 なんだか気味が悪く、おれは恐々と外を覗いた。と、窓から見下ろす庭に一体のお地蔵さまがいた。
「なぜここにお地蔵さまが?」
そう思ったとき、お地蔵さまが口を開いた。
「先日は、笠をありがとうございました。いい雪除けだと仲間も喜んでおりましたゆえ、お礼に参りました」
 笠といえば、少し前に社員旅行で買った。でも正直いらなくて、そこにいたお地蔵さまに被せたんだ。
「ずいぶん遠くから来たね。でも、お礼って?」
「ハイッ!おーい、みんな!」
 お地蔵さまが振り返り、誰かを呼んだ。と、草むらから数体のお地蔵さまが現れたから驚いた。
「今日は雪見酒といきましょう、ご主人!」
 そう言うとお地蔵さまの体がとっくりに、笠がおちょこに変わった。
 お地蔵さまとの酒盛りは、なかなか味わい深かった。
 
公開:25/12/12 23:34

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容