サンタクロースになりたい

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 サンタクロースになりたい。それがおれが初めて抱いた「将来の夢」だった。
 サンタクロースだけど、七夕の短冊にも書いた。
 神社だけど、神様にもお願いした。
 だけど数年後、おれはその夢を捨てた。短冊に書いて友達に笑われたからじゃない。大人になったからでもない。サンタクロースに会ったからだ。おれはサンタクロースに会えたんだ!そして、こう言われた。
「わしになりたければ、ケーキの上のわしを食べなさい」
「ケーキの上の?ああ、砂糖菓子、サンタの形の…えっ?」
 いや、食えない食えない!誰が憧れの大師匠を食えるか! 


「ーーとまあ、これが父さんが将来の夢を捨てた理由だ。だからおまえも、諦めなさい。無茶なことを言われる前に」
 息子が書いた「サンタさんへの手紙」を見ながら、おれは言うのだった。

『サンタさんへ
   サンタさんのお手伝いがしたいから、ボクをトナカイにしてください』
公開:25/12/04 11:24

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