ごはん泥棒

　ごはん泥棒が現れた！
　このニュースは瞬く間に日本中を駆け巡った。人々は皆、それに震えた。
「ごはん泥棒が来る……ごはん泥棒が来る！」
　次の日、全国各地いたる所で、ごはんが無くなる騒ぎが起こった。今からごはんを炊こうとしていた人は「あれっ⁉︎」と声を上げた。昨日米を買ったばかりの人は「これもかよ」と呆れた。が、彼らに共通して言えること、それは彼らが口で言うほど怒ってはいないということだった。気のせいか笑い声をあげそうな口をした人までいる。

　この一連の事件に首を傾げた集団がある。それは日本に来て間もない外国の人たち。
「米は日本の命でしょう？どうしてみんな、笑っていられる？」
　日本でホームステイに来ていた外国の人は不思議な顔で聞いた。「もうすぐわかるわ」と、そこのお母さんは言った。

　後日、名もなきごはん泥棒から、美味しいご飯の炊き方レシピと、それにとびきり合うおかずが届いた。