処方戦

「錠剤を飲んだあと、同封の指示に従ってください」
薬局で薬を受け取る時、そう告げられた。
どういうことかと開けてみると、錠剤と一緒に、折り畳まれた紙が入っていた。

翌朝。会社で薬を飲み、同封の紙を広げた。
「新しい知り合いを一人、作ること」と書かれている。

思案して、隣の部署に行く。先日あったトラブルのお礼をした。
喜んでくれて、ランチを一緒に行くことになった。

指示は、一つずつ内容が異なっていた。
「朝３０分早く起きてみる」
「違う道を歩いてみる」

薬を飲みきった頃、私は元気を取り戻しつつあった。
病院に行くと、もう薬はいらないという。

私に出されたのは「処方戦」というそうだ。
今の自分にちょうどいい試練、すなわち挑戦を処方する。
ちなみに錠剤は、ただのラムネだった。

今では、気の向いた時に新しい挑戦をするようになっている。
自分で処方戦を書けるようになったのだ。