アイデンティティ&ファイ

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 「私の罪を告白しに参りました」

 その言葉に耳を傾ける。

 「私は人を殺しました」

 「その人は、いつも自分の事ばかりで、私を蔑ろにして」
 「自分は一番可哀想で不幸だと嘆いて、皆から同情を買っていました」
 「皆その人を気にかけ、優しくしました」
 「その人はそれが気持ち良くなって、どんどんエスカレートしていって」
 「会う度に違う事を言っていたり、別人のように振る舞っていたり、皆不審に思い始めて」
 「問い詰めたら泣いて喚いて半狂乱になって」
 「『ただ構って欲しかった』『皆に気にかけて欲しかった』『私は悪くない』って泣き崩れて」
 「私はその人に散々振り回されて、失って、苦しんで...それでとうとう...」

 話しが終わり、私は口を開く。

 「主は全てを受け入れます」
 「最後に一つ宜しいですか」

 「今のあなたは『誰』なんですか?」

 鏡に映る彼女と私の目が合った。
ホラー
公開:25/05/01 14:30
更新:25/05/03 02:11

甘露

真面目にのほほんと書いていけたらと思っております。
下手の横好きですが、宜しくお願い致します。

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