野に咲く祝福

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 路地裏の5番目の角。朝でも薄暗い通路を進むと、猫がいる。
 いつからいるのか、ずっといたのか分からないその猫は、目を閉じてじっとしている。
 出会って3回目から『やあ、どうも』と声をかけてみる。返事は無い。苦笑いしながら病院へ向かう。
 
 暑い日も寒い日も、いつもいる。
 『やあ、どうも』は日課になっていた。

 いくつか季節が進み、変わらず路地裏を通り病院へ向かう途中、いつもの猫を見つける。
 『やあ、どうも』も何回言っただろう。そう考えていると、猫が目を開けこちらを見て『にゃあ』と言った。

 驚いて固まっていたら、猫は満足したのかまた目を閉じた。その様子を見てハッとして、猫に手を振り走り出す。何だか良い事がある気がして病室へ駆け込むと、あの人が目を覚ましていた。気付けば泣き崩れていて、笑われた。

 翌日いつもの路地裏を通るが、猫がいない。代わりに白い小さな花が咲いていた。
その他
公開:25/04/26 00:29

甘露

真面目にのほほんと書いていけたらと思っております。
下手の横好きですが、宜しくお願い致します。

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