好きな子のとなりに行けない席替え

6
4

「はい、みんな席着いてー」
 先生が声をかける。ばらばらと席についた僕らに、先生は言った。「今日はまず席替えをします」静まっていた教室が一気に騒がしくなる。そんな中で僕は一人、フンと鼻を鳴らした。
「席替えくらいで喜んじゃって、みんな子供だなぁ」
「なんだよ、おまえは嬉しくないのか?」
 友達のおタケが小突いてくる。僕はそっぽを向くと、「嬉しくないね。僕はそんなことくらいじゃ喜ばない。大人なんだ」
「なんだよ、面白くねぇやつ」
 呆れた声を飛ばすと、おタケはみんなに混じって席のくじ引きをしに行った。
「なんだよ……」
 小さく呟くと、僕はある一点を盗み見る。そこには大好きな23番ちゃんがいて、綺麗な顔で微笑んでいた。
「望み通りの席に行けないこと、みんな気づけよ」
 席が少し横にずれただけで、両隣は変わらない、思った通りの席だ。
 あーあ、どうして僕は、カレンダーになったんだろう。
公開:25/04/09 12:28

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容