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「これ、やるわ」
 そう言って先輩はたくさんの教科書や参考書をくれた。それにはこれまたたくさんの付箋が挟まっていて、勉強の手の付け方がわからない俺は、正直ありがたかった。
 ところがだ。それらの教科書や参考書は騒がしかった。冗談ではなく、本当にそれら、正しくそれらに挟んである付箋たちが喋っているのだ。「先輩、これは……?」
 尋ねるおれに先輩は気まずそうに言った。
「それな、おれも先輩からもらったんだけど、それまでにいろんな人間に貸したみたいでさ、ああでもないこうでもない、おれはこう思ういやおれはこう……って、舌戦を展開してて、いったいどれが正解なのか、勉強にならなくてさ」
 そういうことなのか。それならーー
「おれはな……!」
「いや違うだろ。そこは……!」
 先輩たちの言葉が途中で切れる。それに構わずおれは付箋という先人たちの舌を引き抜いていくーー。
公開:25/03/25 17:45

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