電子書籍になったキャベツ

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キャベツの葉をくしゃっと丸めると、傍らの鍋に放りこんだ。
食事はこの一週間、ボツになったキャベツだけ。

私はキャベツ作家だ。
種にアイデアを埋め込み、育てると、アイデアはキャベツの中で成長する。
収穫のころには、葉に完成された物語が浮き出るのだ。

アイデアを作るだけでなく、育てるのも作家の仕事だ。
できあがる物語は、水、肥料や土地などで変わる。
望む物語になるよう、日々世話をするのだ。

このキャベツ、読んだ後は食べられるが、保存ができない。
好みの話を保存したい声が上がり、キャベツは電子化された。

キャベツが物語を育てる仕組みを解明し、パソコンで再現した。
作家は、アイデアを作ることに専念できた。

電子化されたキャベツも物語を生み出した。
だが平均的で、面白くはなくなってしまっていた。

電子化した影響で、アイデアのよき「青臭さ」が抜けてしまったからだった。
ファンタジー
公開:25/03/20 11:09
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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