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「新人の鈴木君だ。鈴木君、皆に挨拶を」
『リンリン!リリン!』
 大きな鈴の音におれのあくびが止まる。部長の隣には木がいた。鈴をたくさん付けた木が。
「あれが新……人?」
 鈴木は仕事ができないやつだった。というか、動かなかった。動けなかった、木だから。
 コミュニケーションも取りづらい。何を言っても、『リンリン!』しか言えないから。
 けれどその鈴木が喋る時がある。それは退勤時。毎日夕方5時になると、鈴木は立ち上がり、叫ぶ。『5時になりました!帰る時間です!』
 どうやら鈴木の鈴は、時計の鈴らしい。設定時刻を組み込んでいるのだろう。
 それならーー。
 部の人間たちは皆で鈴木に「あること」を頼んだ。

「部長!三分経ちました!部長は先ほど、三分で話を終わらせると仰いました!」
 鈴木の鈴で『ストップ!残業‼︎』を目論んでいたらしい部長は、苦虫を噛み潰した顔をしていた。
公開:25/03/16 09:05

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