花粉症のエレベータ

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春、私の仕事が忙しくなる季節だ。

エレベータの天井にのぼり、機械を点検すると、見慣れた症状だった。
熱を持ち、ランプが不定期に明滅している。

これはエレベータの花粉症だ。
外から吹き込んだり、人についた花粉が機械に入り不具合を起こす。
エアダスターで吹き飛ばし、丁寧に拭き、一応動くようにはなった。

でも、これは対処療法だ。
完治のため、エレベータたちとともに、船に乗ることとなった。
行き先は南国。
春の間、花粉症の原因となる木がないところに避難させるのだ。

症状は軽減され、南の島の倉庫には大量のエレベータがやってきた。
梅雨が明ける頃、元の場所へと帰っていく。

問題は、春の間エレベータがなくなることだ。
そのため、花粉症の時期は人間も休みになった。

南へ向かうエレベータたちは、今や春の風物詩となっている。
ファンタジー
公開:25/03/15 12:13
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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