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 面白い漁を見せてやる、と父が漁船に乗せてくれた。父は寿司職人で漁師だった。
「来たぞ、ぶつからないように気をつけろ!」
 釣り糸を垂れてすぐのことだった。釣り上げられた魚を見れば、それはなんと魚の形の醤油瓶だった。
「父さん、これは?」
「マグロだ。醤油に漬け込んだ、な」
「醤油に?そんなのが釣れるの?」
 目を丸くすると、今度は少し大きめの四角い醤油瓶が飛んできた。それを見て、父さんの声が跳ね上がる。「フグだ!大物だぞ!」
「ありがたいっすね、毒抜きの手間が省ける」
 仲間のひとりが言って、漁船に乗るみんなが笑う。と、それを遮るほどの大声で誰かが言った。「来ました!こっちも大物です!」
 若い漁師が釣り上げた醤油瓶は、黄色い姿をしていた。それは仲間内で「卵」と呼んでいる「大豆」だった。
 面白いね、父に言うと、父は大きく頷いて言った。
「これがあるから、大口の注文も楽でいいよ!」
公開:25/08/02 04:46

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