消しゴムのカド

　仕事も恋も、もう人生それ自体うまくいかないおれに友人がプレゼントしてくれたのは、なぜか消しゴムだった。
「豆腐のカドで頭打ってー、とか言うだろ？ありゃ嘘さ。本当に◯ねるのは、消しゴムのカドで頭を打つ方法」
「消しゴムのカド？まさか」
　てか嘘も何も豆腐のカドだって例えか何かだし、本気で◯ねると思う人いないだろ。
　心の中で文句を言うおれに友人はいきなり消しゴムを投げつけてきた。と、脳内で「パリンッ」と音がした。
「な、なんだ？今の」
　戸惑うおれに友人が説明してくれる。その手には真っ黒くなってすこし欠けた消しゴム。
「パリンッ、て音したか？あれはおまえの忘れたい記憶。それをこの消しゴムが消してくれたんだよ」
　つまり、それまでのイヤな記憶が◯んだという。友人の言うそれが本当かはわからない。それでおれの人生が好転したわけでもない。が、どうして最近、おれのペンケースにはその消しゴムが多い。