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 灯りを消して、部屋の隅で。もうどれくらい、こうしているだろう。同じ姿勢で何時間、全身痺れているだろうが、それすらもう感じない。
 きっかけは、ちょっとしたことだった。ほんの些細なこと。それがおれを窮地に追い込んだ。
「それでも、腹は減るんだな」
 食い物を取りにいこうと仕方なく立ちあがろうとした、その時だった。
「うわあっ……!」
 勢いよくずっこけた。こんなにも痺れていたかと驚いた。
「どうしてこんなことに…」
 悲しくて涙が出る。心も体も痛い。
 と、窓のカーテンがひらめき、誰かが入ってきた。そいつは言った。
「ごめんごめん、歩けなかったんじゃない?もう大丈夫だからね!」
 言ったとたん、そいつはおれに取り憑いた。
「消しに行ってたんだ、君の悪い嘘の噂」
 あと、仕事も取ってきたーーって、明るかったときのおれより明るい声で、『おれの影』は言った。
公開:25/06/22 19:01
噂をすれば影 意味が違うけど ネモフィラさんへ

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