VR水泳

　水泳用のVRゴーグルなるものが発売された。それを付けて潜水すると、何の変哲もないプールで魚が泳いでいるように見えるのだ。だいぶお高めだが、これなら水泳を頑張れるというから、息子に買ってあげた。息子は泳ぎは苦手だが、水族館は大好きだった。
　さて、そして今日はついに水泳の日。私はまるで選手を送り出すように息子の肩を叩いて送り出した。
「頑張れ、目標25メートル！」
　

　夕方、学校から戻ってきた息子。ひどく疲れているようで、私は息子の頑張っている姿を想像した。

　VRゴーグルを買ってあげたことを後悔したのは、夕食の時だった。自分の部屋から出てきて鼻をクンクンしていた息子は一言言った。
「ママ、ぼく今日から、魚は食べないから」
　プールで泳ぐのはクラスメート。クラスメートは食べられない、息子はそう言った。