スマートウィッチ

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「よろしくお願いしますね、ご主人」
ほうきに乗った、手のひらサイズの女の子が空中で挨拶した。

ネット通販で、流行りのスマートウォッチを買った。
宅配が届いて箱を開けたら、ウォッチではなくウィッチだったというわけだ。

頭の上に浮き、常に着いてきてくれる。
スケジュールは言葉で伝え、メモは話せば覚えておいてくれるし、目覚ましもしてくれる。
夜は充電台で眠っていた。

人の形をしているからだろうか。
道具ではなく、家族のように感じていた。
そんなある日、机の上にメモが置かれていた。

「不具合が見つかったため、回収になります。ご愛用ありがとうございました」

大事な人を失ったかのように、私は落胆した。
買い替えはしなかった。

数ヵ月後。
呼び鈴が鳴り、玄関を開けると、メイド服姿の女性が立っていた。
どこかで見た記憶があった。

「お久しぶりです。バージョンアップして戻ってきました!」
ファンタジー
公開:25/05/26 10:48

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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