空虚な激情

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 この世はとても面倒臭い。

 頭からバケツの水をぶっかけられながら考える。

 『アンタなんかこの世界に必要とされてねーんだよ』

 そう言って綺麗な顔のそいつは見下ろしていた。

 でも今は、さっきの綺麗な顔に抱きしめられている。

 『好き。大好き』
 『アンタの事を愛してる。誰よりも大事にしたい。甘やかしたい』
 『でも』
 『それと同じくらい、虐めたい。傷付けたい』

 そう言ってキスされる。
 そして蕩けた顔で懇願される。

 『私も同じくらい虐めて、甘やかして?』

 目の前の白いそいつの首に両手を掛けて、考える。

 この世はとても面倒臭い。

 人を愛し、愛されるのも簡単に出来ない。
 ややこしくしないと『本物』だと思えないようで。
 共感なんて無い空っぽな心を込めて、憐れな首を強く絞める。

 『私も愛してるよ』

 この世界に必要とされている限りは。
恋愛
公開:25/05/13 12:15
更新:25/05/13 20:00

甘露

真面目にのほほんと書いていけたらと思っております。
下手の横好きですが、宜しくお願い致します。

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