衣服の名刺

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 その店の二階は、随分と賑わっている様子だったんだ。たくさんの声が聞こえたからね。だがいざ行ってみるとそこには僕と同じように紳士服を求めにきた人が数人いるだけだったんだ。首を傾げつつ目についた紳士服を眺めていたとき、それは起こった。
「ああ、どうもどうも。はじめまして、私こういう者です。」
 目の前の紳士服が、僕に向かってそう言ったんだ。見ると服の袖がタグを差し出すように、こちらに向かって伸びていた。そこには当然服のブランド名が書かれていた。
「あ、ああ、これはどうも」
 こちらもつい名刺を差し出すと紳士服は続けて、
「ほお、〇〇会社にお勤めですか。それではあちらの方がよろしいですね。残念ですが」
と、別の紳士服を勧めてくれた。この出会いはなかったということさ。
 え?次の紳士服はどんなやつだったかって?
 さあ、知らないな。値段同様、お高くとまった奴だったから、こっちから願い下げしたさ。
公開:24/10/17 17:55
更新:24/10/17 18:00
服のタグって 外資系企業の 社員さんが多そう(笑

さがやま なつき( 鹿児島 )

2021年7月初投稿。お話の主人公は男性(もしくは少年)が多め。女性はキャラ作りが苦手です。(口調が書けない)

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