最新の過去

人とコンピュータが共存するようになった、ほんの少し未来。

コンピュータは、思考や感情を記録していく。
そのデータ目を付けた企業が、コンテンツとして売ることをはじめた。
人には泣きたいとき、笑いたいとき、怒りたいときがある。
そういうときに、気軽に目的の感情を買えるようになった。

しかし──社会に変化が現れた。
新作の映画も、本も、ドラマも、手に取る人が減ってきたのだ。
代わりに売れはじめたのは、平成のコンテンツ。
日に日に変化し、昭和、大正、明治、と遡っていった。
それに合わせて、人々の生活スタイルも過去のものへと変わっていった。

記録されたデータは常に過去のもの。
それを取り込んだことが原因だった。
新製品が売れなくなった企業は感情の販売を停止したが、ネット上にはすでに類似のサービスが多量にあった。

数年後。
流行は、短歌に蹴鞠、茶会に碁。
平安時代の貴族の遊びだった。