返却しなくてもいい図書館

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駅前のカフェで休んでいたら、声をかけられた。
怪しげな勧誘だろうと無視していたら、本が置かれていた。
初見の著者の本だ。興味が出て、カバンに入れ店を出た。

数日後の週末。
玄関の呼び鈴が鳴った。ドアを開けると、スーツの女性が立っていた。
図書館の司書で、期限を過ぎたので来た、という。

この図書館は返却不要だが、期限までに読み終え、本を他の誰かに渡す必要があるらしい。
カフェで手にした本を思い出した。

私は期限切れと未読の違反だという。
延滞金は不要だが、自分で本を書いて収めろと言ってきた。ルールらしい。

以来、司書は編集者の如く来ては、執筆を催促した。
どうにか形になったのは2年。本は図書館に収められ、いずこかへと旅立っていった。

その後、私は小説家になり、あの図書館の正体を知った。
世界に本を広めるための秘密結社。
読む人はもちろん、書く人も増やすのが目的だそうだ。
ファンタジー
公開:24/10/06 23:02

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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