扇風機のおしごと

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「長かった夏も、ようやく終わるか」
 感慨にふけるおれの横で、友人も深くうなずく。
「ーー始めるか、じゃあ」
 そう言うとおれたちは砂浜を離れ、海の家に向かう。海の家にはたくさんの店と人々の思い出と、そして扇風機が並んでいる。それら扇風機をすべてさっきの砂浜に並べ、首振りで静かに風を回す。
 海の家で働くおれたちの最後の仕事、それは秋を探すこと。あまり知られていないが秋は小さい、そして怖がりだ。だからなかなか出てこないから、おれたちが外に誘ってあげるのだ。そろそろ出てこないか?って。そのために活躍してくれるのが扇風機。扇風機が首を振っている姿は本当に探し物をしているみたいで、なかなか可愛い。
「お、きたきた」
 扇風機のやさしく涼しい風に誘われて、秋の葉っぱや木の実が来た。
「たくさん見つけたなぁ、よくやった!」
 顔中に秋をつけた夏の扇風機も、最後の大仕事を褒められて嬉しそうだった。
公開:24/10/06 12:17
更新:24/10/06 13:03

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