服に困るサンマ

10
5

 草木も眠る丑三つ時、サンマの大名行列が城へと向かっていく。先頭を行くのは世話役のチョウチンアンコウ。頭のちょうちんが足元の悪い皆の道をぼんやりと照らす。と、チョウチンアンコウは一匹のサンマの異変に気づき、声をかけた。それは城で待つ殿の食事係、食べられる係の者だった。
「緊張しておるか?」
 情けないと思いながら、だが柔らかく言う。
「案ずるな。サンマは殿の好物だ。それとも、いやなのか?食べれられるのが」
「違うのです、チョウチンアンコウ様」
 サンマは顔を上げて言ったが、言葉は続かない。が、何も言わずとも、サンマの悩みはすぐにわかった。夜が明け、その姿が露わになったのだ。サンマの濃紺の裃はぼろぼろで、真っ白な裸体がちらほら見えていた。呆気に取られるチョウチンアンコウに、サンマは言った。
「美味しく頂いてほしくて少々身を焼きすぎてしまいまして、このような姿を晒してよいものかと……」
公開:24/10/02 23:07
更新:24/10/02 23:27
#研究室ライブ

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容