モラトリアムの季節たち

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長かった夏も終わりに向かう、9月の後半。
朝晩の風に、秋の匂いを感じるようになる頃。
──空の上で、人知れず騒動が起きていた。

秋が到着したのに、夏は残ると譲らない。
もめているところに、冬も来てしまう。
地上では、一週間おきに季節が変わりはじめた。

騒ぎは続く。

ずっと身を隠していた平成の夏が顔を出したのだ。
それをきっかけに、バブル期の冬や昭和の春まで登場した。

仕事を終えたら、次の季節に交代するのが決まりだ。
役目を終えた季節は消えるが、それを拒否し空に留まっていたらしい。

地上は混迷を深め、一日の中で春夏秋冬が入れ替わるほどだ。

やがて訪れた年末。
彼方から巨大な蛇が現れた。来年の干支だ。
大蛇は、居残っていた季節を飲み込むと、雲の上に身を横たえた。

「お前は、ちゃんと帰れよ」

ギロリ、と竜を見据えた。
今年の干支は身を震わせ、何度も頷く。

ようやく、季節が巡る。
ファンタジー
公開:24/09/22 11:56

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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