猛暑が残していったもの

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酷暑の夏。
人々はいらいらを募らせていた。
笑顔が消え、余裕がなくなり、争いが増えていった。

季節は巡り、実りの秋。
植物に異変が現れた。歴史上まれに見る猛暑の影響だ。

柿は大人の頭ほどに成長し、
稲は七色の穂を実らせた。
秋の味覚、ぶどうも巨大化。香りと甘さが強まり、グミのような歯ごたえになった。
また、果汁を煮詰めると接着剤になると分かり、工事現場で活用が始まった。

数ヶ月後。接着箇所からお酒の匂いがあふれ始めた。
ブドウの果汁がワインになったのだ。

接着力は魅力だが使う場所を選ぶということで、ブドウ接着剤はすたれてしまう。
捨ててはもったいない、とワインになったものを飲んでみると、
絶妙な甘みと苦み、すっきりした香りに、飲んだ者同士の会話が弾んだ。

かくして、このワインは知る人ぞ知る名品として世に出た。
酷暑が残した実りは、世界に笑顔を拡げていったのだった。
ファンタジー
公開:24/09/16 13:49
更新:24/09/16 13:49

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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