万年五月病の上司

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古代の迷宮の再深層、私たちは巨竜と対峙した。
──すでに化石となっていたが。

「よかったね、戦わずにすんだじゃん」
言ったのは私の上司、「勇者」だ。
「さあ、帰って寝よう。もうダルくてさー」
上司の背中を見ていたら、私もあくびが出た。

この国を襲う脅威を倒してから、数年が経っていた。
平和な世界では、勇者はただの危険人物。
世界を救うほどの力を持つ彼がその気になれば、国の一つくらい簡単に滅ぶ。

だから私は最後の戦いの後、彼に異世界の呪いをかけた。
「五月病」という、力の大半を封じ、常に気だるくなる呪いだ。

ただ、この呪いは伝染するらしい。
最初は近くに居た私が影響を受けた。
近頃は国民の多くもまた、気だるそうにしている。

私は上司と世界を旅することに決めた。
「五月病」をあまねく広めるためだ。
そうすれば、世界から争いは消える、と信じて──。
ファンタジー
公開:24/09/13 16:33

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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