古酒の軌跡

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遥か広がる蒼い空と海。
夏の終わり、南にある離島へとやってきました。

島の名産は「泡盛」というお酒。
この島でしか手に入らない、稀少品なのです。

酒造所を見学し、併設のバーで泡盛を注文します。
マスターが瓶と海の色をしたグラスを並べると、瓶を高く掲げ、グラスに注ぎました。

グラスの中で波が寄せて返すように流れ、泡立ちました。
酒のできがよいと細かく良い泡ができ、それが「泡盛」の由来という説もあるそう。

すぐに飲み干すと、「あなたが注いでみませんか」と勧めてくれました。
見よう見まねで注ぐと、ボコボコと大きな泡が生まれました。
ちょっと不格好です。

マスターは笑顔で言いました。
注いだ人が挑んできたこと、努力していること、悩んだこと──
それが酒のうまみになるのだと。

グラスを見つめました。

揺らめく不格好な泡。
それは人生の軌跡として、確かにそこにありました。
ファンタジー
公開:24/09/01 15:06

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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