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「おまえ、いったいどう知り合ったんだよ?タレントのあの子と」
「あの子って?っていうか、まずおれにタレントの知り合いはいないが」
「ウソつけ。きのう見たんだぞ。おまえが彼女の部屋に入っていくのをな」
 そのことはもう、おれの知り合いの中じゃ、噂になっているらしい。
「うわさっておまえ、よけいなことを……!」
 身に覚えのない行動を言いふらされて、いったいどうしたものかと考えを巡らせていると、ちょうどよく目に入った。横断歩道の向こう、例のタレントがいる。彼女が腕を絡めているのはーーおれだ。間違いなく、おれだ。
 じゃあ、今ここにいるおれは誰だ?いや、おれはおれだ。おれはおれ一人だ。じゃああれは、三人見たら死ぬというドッペルゲンガー?……ひぃっ!
「羨ましいなぁ、もう一人のおれ」
 怖さを吹き飛ばすように、おれは呟いた。
公開:24/08/08 19:35
噂の一人歩き

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