ジンベエじいちゃん

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 じいちゃんとはぐれた。水族館だった。魚がたくさんいる大水槽を見ていたとき、じいちゃんが突然、
「餌の時間だな」と言って、僕の手を話したんだ。で、一人どこかに歩いて行った。
 僕はじいちゃんを探した。じいちゃんが着ていたジンベエを頼りに。「ジンベ、ジンベ」と呟きながら。
「この甚兵衛はな、じいちゃんがジンベイザメだった頃の名残なんさ」
 よく言っていたその言葉を、誰も信じなかった。そんなわけない、だいたいじいちゃん、泳げないじゃんーーって。

「ジンベ、じいちゃん、ジンベ、じいちゃん」

 小さな水槽の前に来たとき、アナウンスが鳴った。ジンベイザメの食事タイムだ。見たかった。
「でも、じいちゃんを探さないと」
 そう思ったとき、声が聞こえた。
「ママ!このジンベエさん、変な色!」
 みやげもの売り場で、男の子がキーホルダーを指差して言う。じいちゃんの甚平色のジンベイザメがそこにいた。
公開:25/01/23 11:19
更新:25/01/23 11:27

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