履歴書の離乳食
7
6
やっと書きあげた履歴書。そのコピーを前に、おれは箸を取り上げる。
「よし、ーーいただきます!」
上の履歴から一行一行、丁寧につまみ上げていく。
幼稚園入園・卒園。小学校入学・卒業。高校、大学、そして……。
履歴書の一枚一枚からは、お世話になった人の味がした。ときに辛口で、ときに甘く、ときにすっぱい味がするそれを、おれはゆっくりと噛み締めていく。
最後の一枚を噛み締めたとき、おれは溢れる涙で目の前が見えなくなった。
「これで大丈夫だ」
あんたは弱虫だから心配だと言われ続けたおれ。履歴書はそんなおれの血肉になってくれた。あの人の優しさから卒業し、あの人の叱咤を力に変えて、おれは今日、この家を出る。
「できたよ、かあさん」
後ろ手にドアを閉めるとき、『母への履歴書』を抱いた母の鼻を啜る音が聞こえた。
「よし、ーーいただきます!」
上の履歴から一行一行、丁寧につまみ上げていく。
幼稚園入園・卒園。小学校入学・卒業。高校、大学、そして……。
履歴書の一枚一枚からは、お世話になった人の味がした。ときに辛口で、ときに甘く、ときにすっぱい味がするそれを、おれはゆっくりと噛み締めていく。
最後の一枚を噛み締めたとき、おれは溢れる涙で目の前が見えなくなった。
「これで大丈夫だ」
あんたは弱虫だから心配だと言われ続けたおれ。履歴書はそんなおれの血肉になってくれた。あの人の優しさから卒業し、あの人の叱咤を力に変えて、おれは今日、この家を出る。
「できたよ、かあさん」
後ろ手にドアを閉めるとき、『母への履歴書』を抱いた母の鼻を啜る音が聞こえた。
公開:25/01/21 09:16
更新:25/01/21 09:20
更新:25/01/21 09:20
#ショートショート研究室
不思議な言葉
「履歴書の離乳食」
ログインするとコメントを投稿できます