座布団整骨院

「こらっ！暴れない！」
　叱りつつ、私は手にしたキャリーを叩く。中からは座布団の抗議の声。へたった座布団をいま連れてきたところだ。
　この『座布団整骨院』に。

「それでは、施術を始めていきますねー。」
　施術師は女の人。最近話題の『ソファ整骨院』の施術師さんのお姉さんらしい。
　柔らかな手つきでマッサージを施していく施術師さん。うるさかった座布団の声が聞こえなくなる。相当気持ちがいいんだ。
「すみませんねぇ。元は自宅で営業していたんですが、患者の声がうるさいと苦情が来まして」
　で、選んだ開業の地が山の中、ってわけね。
「たいへんですね、女性なのに。山の中、暗くなると怖いでしょう？」
　そう言うと施術師さんは笑って否定した。彼らがいるから大丈夫と言う。
「だいたい動物が原因なんですよ、座布団が傷つく理由」
「……」
　目頭が熱くなる。亡くなったみーちゃんは、座布団の愛用者だった。