真実のサンタクロース

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クリスマスイブの朝、サンタ村から全てのサンタが失踪した。

残されたのは、見習いの幼い少年ただ一人。
プレゼントを配ったこともなく、トナカイも操れない。
暖炉に木をくべ、先輩の帰りを待つことにした。

夜になると少年は意を決し、トナカイとそりを引っ張りだした。
プレゼント配りを止めるわけにはいかない。

深夜、ボロボロの先輩サンタが帰ってきた。
少年の姿を見て破顔すると、サンタたちはプレゼントを手に旅だった。

イブの日。
ある者は国の争いを止めるため、ある者は災害の復旧のため。
人知れず世界を飛び回っていたのだ。
プレゼントを受け取るには、静かな夜が必要だから。

当たり前は、名も知らぬ英雄によって作られる。
大人にはプレゼントは届かない。子どもたちの当たり前を守らなくてはいけないからだ。

誰にも知られず、世界に平和を──それが、サンタクロースの真の使命だった。
ファンタジー
公開:24/12/25 09:55

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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