神さまの年末調整

年末、会社では年末調整が行われる。
書類を集めるために一騒ぎあったりするものだ。

それは天界にも存在する。
神が調整するのは、一年の「運」だ。
良いこと悪いことひっくるめ、一年で帳尻が合うようにするのだ。

今年は運の収入が多かった。
そこで、来年に備えて溜めておく保守派と、どんどん使おうという推進派に分かれ議論していた。
師走も残り数日となっても、話はまとまらない。

ある朝、推進派の一部が倉庫に忍び込んだ。
納入された運を奪うと、世界にばらまいた。

人の世界は大晦日。
慌ただしかった一年も終わろうとしていた。
そして──何事もなく、年が明けた。

けれど、人々は知らない。
大晦日に巻かれた運は、その日に起きるあらゆる困難ごとを打ち消したことを。

神々は議論の末、結果がよかったとのことで推進派はおとがめ無し。
神さまの世界も無事に、新年を迎えたのだった。