剣士が切れないもの
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近所の服屋が、服のお直しも始めた。担当はその店の息子さんというが、この子がまたちょっと変わっている。普段着のごとく、剣道着を身に纏っていて、言葉だって戦国とか幕末の武士のよう。
そんな、ちょっと変わった彼だけど、腕はいい。長い丈も、ちょっとしたほつれも、後々不具合の出ないように綺麗に切り揃えてくれる。そのうえに切長細面のイケメン君、自然そこは女子のたまり場となっていた。
そういう私もその中の1人だったのだけれど、すぐに抜けた。いくら頼んでも切ってくれないものがあったからだ。
「ねえねえ、ちょっと、ほんのちょっとでいいの。まけてくれない?」
「何を言う。拙者は武士。武士たるもの、たった一度の〝負け〟も恥ずべきと心得ておる」
そんな、ちょっと変わった彼だけど、腕はいい。長い丈も、ちょっとしたほつれも、後々不具合の出ないように綺麗に切り揃えてくれる。そのうえに切長細面のイケメン君、自然そこは女子のたまり場となっていた。
そういう私もその中の1人だったのだけれど、すぐに抜けた。いくら頼んでも切ってくれないものがあったからだ。
「ねえねえ、ちょっと、ほんのちょっとでいいの。まけてくれない?」
「何を言う。拙者は武士。武士たるもの、たった一度の〝負け〟も恥ずべきと心得ておる」
公開:24/12/20 06:00
更新:24/12/20 04:41
更新:24/12/20 04:41
#ショートショート研究室
不思議な言葉
『売店の剣士』
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