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 下校中、ぼくの頭上にはさっきからずっと小さな雲が漂っていた。足下にはその影が落ちている。
「君はあの辺りにいた子だよね」
 何気なく語りかけると、雲はうなずくように上下に動いた。
「どうしてこっちに来たの?ぼくに何か用事?」
〝今日は暑いから、帽子〟
 驚いた。雲と会話できた!
「帽子の代わりをしてくれているんだね、ありがとう」
 頭を下げる。と、雲がまた言った。「ボクの方こそ、ありがとう」って。首を傾げるぼく。
「きのう、ボクを見つけてくれた。ひとりぼっちで、さみしかったボクを」
 この雲はきのうの下校時、ひとり離れてぽつんとしてた小さな雲だ。
「そうか。寂しかったのか」
 うん、と言うように雲はぼくの頬にすり寄り、猫みたいに甘えた。
公開:24/12/13 16:50
更新:24/12/14 03:28

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