初めての鍵

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僕はもうすぐ、十五歳になる。

この国では、生まれた人は暗号化が施される。
解除には鍵となる、瞳にあるコードを交換する必要がある。
1分間見つめ合うことで鍵が交換され、会話ができるようになる。

家族や同級生とは交換していたけど、他人とはしたことがない。
それが解禁されるのが十五歳の誕生日、というわけだ。

どうしても、話をしたい人がいた。
同じ塾に通う、隣町の中学の子。

待ちわびた誕生日を迎え、放課後の塾であの子を探した。
けれど、見つからない。
講義が終わるまで待っても現れず、先生に聞いた。
引っ越しで、別の教室に転校したそうだ。

それ以来、話したい人が居たらすぐに鍵を交換するようになった。
「いつか」はこないかもしれないと思い知ったから。

初めての鍵交換はあの子とした。
引っ越し先を教えてもらって、駆けつけたのだ。
ファンタジー
公開:24/11/17 12:34

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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