幸せの時計

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その国全体は、長らく閉塞感に覆われていた。
政府は状況を変えるべく、全国民にスマートウォッチが配られた。

心拍数や血流を計る機能があり、本人が幸せを感じるとポイントが貯まる。
ポイントは買い物に利用できた。
国内の幸せを増やす狙いだった。

けれど失敗した。
幸せな人がより幸せになり、格差が拡大したのだ。

そこで今までと逆で、本人が不幸だと思う度にポイントが貯まるように変更された。
これなら、不幸な人を救えるという考えだ。

──自ら不幸になってポイントを稼ぐ、ということが横行した。

政府はまた仕組みを変え、普通な人ほどポイントが貯まるようになった。
何気ない日常こそ幸せだ、という願いを込めてのことだ。
しかし、その国はほどなくして滅んでしまった。

誰もが普通に盗み、普通にサボり、普通に法をおかした。
「普通」の感覚が下がり続けていたことに、誰も気づかなかったためだ。
ファンタジー
公開:24/05/10 10:53

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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