猫が天井を見ている

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 猫が天井を見ている。その視線の先を追えば、天井の中央あたりに大きなシミを発見する。雨漏りの跡だ。きのうよりも大きくなっている気がする。手を伸ばすと、そこだけこんもりと膨らんでおり、指でつまめるほどだった。
「うわあ!」
 つまむとそこはドアノブのように回転し、天井板が外れた。そして天井裏からなんと魚が降ってきた。不思議に思ったが、その疑問は即座に打ち消した。仕事のない身、つねに腹は空かしているのだ。
「おまえも食うよな」
 いわば恩人である通い猫とともに魚を食らえば、腹も心も満たされていく。瞼はどんどん落ちていく。
「それにしても、この部屋がまさか海と繋がっていたとは」
 そう呟いてからの記憶はない。ようやく起きたのは今しがた見た夢の中、踊り狂う数字と「¥」のマークにうなされたからだった。
 その日以来、俺は魚屋からの請求書が来るのではと怯える毎日を送っている。
公開:24/05/13 00:39

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