4
4

 十代の頃から、大なり小なり悪事を重ねてきた。そんな信用のない俺がとある条件付きで一人暮らしを許されたのは四十を過ぎた後。家族の目がきつくてそれまで女もできなかったが、すぐに彼女はできた。だが、不安だった。これまでと同様、1人になった俺のそばにも、長く一緒にいてくれる女性はいないだろう、と。なぜならーー
「あんた、また悪さをしたね!」
「小さなことでも、悪事は悪事だよ!」
 俺の部屋では、毎日家族の声がする。それは家族から持って行けと言われた畳のせいだ。家族の目を宿した畳が、俺の動向を見張っているのだ。
「これじゃあ結婚は無理だな」
 そう思っていたが、彼女とは難なくゴールインした。姑の監視が嫌ではないのか?
 それを言うと、彼女は答えるのだった。
「嫌だなんてそんな!だってつねにお義母さんの目があれば、あなた、浮気なんてできないでしょ!」
 彼女の可愛い笑顔が、今日は怖かった。
公開:24/05/02 07:51
壁に耳あり障子に目あり の変化させた話 百目鬼 妖怪

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容