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 何日かぶりに会ったあいつ。やっぱりというか、ずいぶんやつれて見えた。
「久しぶりだな。おまえ、どこでなにしてたんだ?」
 尋ねるとあいつは緩慢に顔を上げ、「ああ」とつぶやいた。まるで今の今まで俺の存在に気づかなかったように。
「缶詰状態になってたんだ」
「缶詰状態?ーーああ」
 なるほど。仕事で部屋にこもっていたのか。忙しいんだな。
「し、しかしブラックな仕事だな。こんなになるまで働かないといけないなんて」
 哀れんでそう言うとあいつは「そうなんだよ!」と俺の肩を掴んだ。その勢いに気圧されていると、あいつは言った。
「ひどいんだよ、うちの奥さん!こないだ部屋の扉を開けようとしたら、開かないんだ。どうしてだ?と思ったら、声が聞こえた。『これはお返ししますわ』って」
「お返しする?なんのことだ?」
「俺のことだよ!あいつ、お中元に間違って俺を送ったんだ!何日も家にいなかったんだよ、俺!」
 
公開:24/04/25 04:20

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