プリンの家

　夢のマイホームは、『プリンの家』がいいわ。
　彼女の言葉に、俺は首を傾げる。プ、プリンの家とはなんぞ？
「こないだ、テレビで見たのよ。小さなアパートなんだけどね、耐震構造がしっかりされているんですって」
「耐震構造？もしやプリンで？」
「そ。建物ってね、地面の揺れに逆らってはいけないんですって。建物に逆らわず、その揺れに合わせることで、地震の被害を抑えるらしいわ」
「へえ」
　彼女がよく勉強していることに感心するが、俺の頭には地面と共に揺れる巨大なプリンという、奇妙な光景が見えていた。
「それじゃあ、今度の休みに見に行こうか。その、『プリンの家』とやらを」
　しかし、夕食の準備中、携帯でテレビを見ていた彼女が叫び声を上げた。どうやら噂のアパートが崩落したらしい。携帯の音量を上げる。
「崩落原因ですが、プリンのようにゆるい屋根にカラスが乗ったと見られ……」